同窓会嫌いだ。
食わず嫌いかもしれないが、行っても何しゃべるんだろう?
それに、今は行き来がないのに、年取った顔を見るのはイヤだし、見られるのも残酷だ。
昔は恥ばっかりかいてたし、最悪なことに、それに気付いてもいなかった。
そんな私が初めて同窓会というものに出かけた。
* * *
12月雨の日。街はクリスマス前の3連休で混み合う中、
連絡をもらった神戸・三宮のある店に入った。
座敷に通されると、5人のエエ歳の男性が談笑していた。
ちょっと遅れて、もう1人女性が加わった。総勢7人。
大学の教養課程で唯一の中国語クラスの同窓会だった。
1クラスだけだったから全学部の吹き溜まりみたいな顔ぶれだった。
当時、一度飲み会の予定があったが、
神戸に甚大な被害をもたらした集中豪雨と重なり、お流れになった。
勾配のきつい六甲山麓の住宅地が鉄砲水の被害を被ったときだ。
たしか、それを最後にそれぞれ専門課程に別れて以来だ。
だから座敷に通されたときは、浦島太郎さながらであった。
唯一、高校も一緒だった旧姓Oくんと、今回何度も声をかけてくれた
旧姓Kさんは、即座にわかった。
髪が乏しくなり、そのぶん精悍でかっこいいNくんは、
ナナハンのライダーで、あと数日、この年内でリタイアするそうだ。
彼が初めて免許をとり、大学まで運転して来た日、
「しんどかった、尻痛かった、もう車で来るのはこりごり」と
言っていたのを、なぜか鮮明に覚えていた。
わぁわぁ言いながら、飲んだり笑ったりするうちに、不思議なもので
学生時代の顔が重なって見えた。
「あんた、だいぶ重なったやろ?」
えええ? そんなん絶対に聞けんやろ。セクハラ?パワハラ?
それが、聞けるし答えられるのが、不思議。
個性も職業も生活も違う5人の男性は、それぞれに奥さんも
見たことがないだろう、18歳の頃の表情に戻っていた。
私ら、女性もきっと同じだっただろう。
紅2点の1人、Nさんは定時制高校で教鞭をとりながら、
漱石の研究を続け、大学でも講義をしているそうだ。
いかにも聡明そうなおでこにストレートヘア、
ちょっぴり鼻にかかった低めの声で、
いきいきと話していたり、笑っている姿が鮮やかに目に浮かぶ。
会ってるからといって、べつだん、何の利害もなく影響もない
不思議な関係。
別れれば、それぞれがそれぞれの日常に返っていく、
すき間の不思議な時間。
ただやり過ごすだけだった時間へ、「バック・トゥ・ザ過去」。
なんかいろんな風に、それぞれが生きてるんだなぁ。
頭では当たり前のことが、不思議な実感として残っている。
「道ですれ違っても、ぜったいわからへんやろうな」
ハイハイ、お互いさま。ババアになって悪かったわね。
私には、今の私しか見えないけれど、
そうしみじみ語った同窓生の目には、どんな私が映っていたのだろう。
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