それは、もうずいぶん前のこと。
仕事の途中で乗った地下鉄の中吊り広告をふと見たとき、
「赤チン」という文字が目に飛び込んできた。
「赤チン少年の夏休み」とかいうキャッチフレーズと少年の写真がある広告だった。
(かなりうろ覚えだが)
赤チンか…。
その文字を見たとたんに、ひざ小僧が擦りむけたヒリヒリする感じがよみがった。
校庭でこけたときの、砂ぼこりの匂いと味も。
保健室で先生に塗ってもらう時、あのしみて痛い「ヨーチン」でなくてよかった、と内心ほっとした。
乾くとメタリックな色に光った。
吊りスカートからのぞく、ひざ小僧の赤チンは目立っていやだった。
* * *
子どもの頃は、きっとどこの家にもあった赤チン。まさに家庭の常備薬だった。
*正しくはマーキュロクロム液というんだった。
Wikipediaによると、1919年に開発され、全世界の家庭の常備薬の一つとして長く使われていた、とあった。
◎オバンスタナカ◎