・ビートたけしを俎上に団塊世代を分析した一冊。
・「古きよき日本の伝統を知る」最後の「コメ芸人」のビートたけし(団塊世代)は、「戦後民主主義のもと、幼少期はこれを鑑に、以降はこれを反面教師として、自由でエゴイスティックでアナーキーに育った」。その結果、「『団塊』以前の日本は跡形もなく消えてしまう運命にあるのである」。なぜなら、団塊世代は、自由と自主性を得る代わりに、儒教道徳と犠牲精神を捨てた。人権と平等意識を得る代わりに、仲間との連帯感や能力的優劣に対する認識力を捨てた。「マイハウス」と核家族を得る代わりに、田園と故郷、祖父母・父母への尊崇・恩愛の念を捨てた。合理主義と利殖思想を得た代わりに、日本的"情"と"義"の感性を捨てた。そういう団塊が育てた団塊ジュニアは、「何もない世代『ゼロ世代』」と定義し、倫理観・モラルが欠落し、人情味に乏しく、本を読まないから独善的で短絡的、核家族だから親への恩愛も尊崇の念も乏しいと断罪する。
・1946年生まれの著者自身、ビートたけしを借りて自分自身の半生を自虐的に自省している節もある。そのため、断片的で断定的な印象が残る。私は団塊世代ではあるが、同じ世代が確信的な生き方をしてきたとは到底思えない。むしろ、団塊世代が日本的価値観の転換期に生き、自分探しに明け暮れて今に至っている。いわば、確かなよりどころをみつけることができず、デラシネ的な生き方をしてしまっていることが問題なのではないか。もっとも、ビートたけし自身はどう考えているのかは分からないが...。